Crosstalkクロストーク

Project Story
03

コロナ禍のコミュニケーションに
安心をプラスする
対面式空間飛沫
除菌装置「eLENA Lin」

コロナ禍の室内空間において頻繁に目にするようになった「空気除菌清浄機」。しかし、実際に会話が交わされる対面シーンにおいて、発生する飛沫を吸引・除菌することで効果を発揮する製品は存在していませんでした。「対面空間にも安心を届けられる製品をつくる」。本プロジェクトストーリーでは、このコロナ禍に上市された「eLENA Lin」の開発を推進した二人のキーマンに、存分に語り合ってもらいました。

2022年5月現在の情報です。
松澤 欣也
技術開発部 部長 2020年入社
松澤 欣也
KINYA MATSUZAWA
精密機器メーカーのエンジニア、マネージャーとして約30年間、技術・製品開発や企画・戦略業務に従事したのち2020年に入社。以来、市場・競合の分析から商品企画、設計、生産、品証、そして上市に至るまで、フジデノロ製品の商品化プロセス構築を担う。
清水 泰貴
商品企画室 室長 2007年入社
清水 泰貴
YASUTAKA SHIMIZU
フジデノロで数々の自社製品開発に携わる。コンセプト立案およびユーザビリティなどの視点を含めた仕様の可視化、製品デザインをはじめ、パンフレットや展示会、web施策といったプロモーション領域に至るまで、フジデノロブランド創出に関するトータルプロデュースを行う。

現場の声をヒアリングして、開発を進めた「eLENA Lin」。

現場の声をヒアリングして、開発を進めた「eLENA Lin」。

清水

当社ではすでに「eLENA」という、空間の空気を吸引して除菌する装置が商品化されていました。2021年の春、当時の新型コロナウイルス変異株の感染拡大といった世の中の状況をチームで共有する中で、「withコロナを見据えて、暮らしや経済活動に安心を提供できないか」という話が持ち上がり、そこから飛沫が発生する「対面での会話シーンに特化する」というアイデアが生まれたんですよね。

松澤

クラスターが発生する主な原因として「飛沫感染」が疑われ、マスクの着用やパーティションの設置といった対策も、100%の予防効果が期待できなくなっていましたから。アイデアの実現に向けて、病院やホテル、デパートや飲食店、金融機関など「対面でのコミュニケーションが欠かせないビジネスシーン」を中心に十分なヒアリングを行い、どこにニーズがあるのかを調査しました。

清水

やはり人が集まっての会議シーンや、不特定多数の人と接する受付といったところでは「日常から感染を恐れているという」声が非常に多くありましたね。

松澤

受付窓口を担当する人たちからは「仕事だから仕方ないけれど、本当は感染に対して不安があります」という声もたくさんありました。飲食店だってものすごく困っていましたし。「対面している空間で、できるだけ人の近くに設置できる」そんな製品を目指すことになりましたね。

清水

会話シーンでの感染で、いちばん最初の原因はなんといっても「飛沫」によるものです。その飛沫をしっかりと吸引したうえで、含まれるウイルスも確実に捕集して、対面空間に綺麗な空気を排出すること。そして、捕集したウイルスは2度と機外に漏れ出ないよう不活性化すること。人の近くに設置して不安を取り除いていくためには、これらの性能を実現していかなければなりませんでした。

松澤

そういう意味で「プロダクトアウト」の発想ではなく、ニーズを起点とする「マーケットイン」の発想で、開発が進められましたね。なかでもニーズの大きかった医療機関においては「より信頼のおける、確かな製品がほしい」という、すなわち確固たるエビデンスも求められました。

清水

「飛沫を吸引する」「ウイルスを捕集する」「ウイルスを不活性化する」という3つの性能を科学的に実証することは、今回の製品開発において最も力を入れた部分です。近畿大学医学部医学物理学の門前教授や、微生物学の藤田准教授をはじめ、藤田医科大学医学部ウイルス・寄生虫学の河本准教授にもご協力いただいて、eLENA Linの根幹を成す「飛沫の吸引性能」「ウイルスの捕集性能」「ウイルスの不活性化」がしっかりと実証されています。

松澤

製品開発と並行して実証実験・エビデンスの取得作業を進めていくのは大変でしたが、その分ニーズに基づいてしっかりと機能が証明されました。もちろん医療機関に限らず、自信を持ってオススメできる製品になっています。それでも、今回は新型コロナウイルスがどんどん変異して感染がおさまらない状況だったので、そこに間に合わせるという時間的な制約が重くのしかかりましたね。

清水

規模の大きい組織ではないですからね。マンパワーという観点から見ると、大変なこともありましたが、私たちが所属する事業開発本部には開発や営業の担当も一緒にいるので、意思疎通しやすく、その分開発スピードが格段に上がったのかもしれないです。

松澤

一般的に一つの製品を作ろうと思えば、企画段階からおよそ1年半から2年はかかりますからね。今回は企画のスタートが2021年の5月、社内の承認をもらって具体的に開発がスタートしたのは6月末から7月なので、思い返すと、とんでもなく速い開発スピードでしたね(笑)。まあ、その圧倒的な「スピード感」こそ、フジデノロの一番の持ち味でもありますね。

「強い吸引力」と「コンパクトさ」、そして「静穏性」。
三位一体の高性能を実現していく

「強い吸引力」と「コンパクトさ」、
そして「静穏性」。
三位一体の高性能を実現していく

松澤

とにかく飛沫を吸い込まなければ、対面での除菌や感染予防効果は期待できない。でも、コンパクトにしなければ置くスペースがなくなってしまう。「強い吸引力」かつ「コンパクト」という、相反する機能を両立させなければならなかったので、苦労が絶えませんでした。

清水

大きなファンを使って強力に吸引しようとすればするほど、モーターや風の音、排気風がネックになってしまいます。タバコルームのような専用のカウンターやテーブルも必要になってしまう。コンパクトさは維持したまま、強い吸引力をどう実現していくか、その知見を得ることをはじめ、短期間のうちに相当数の試作・評価を重ねました。

松澤

音の大きさや周波数の問題もありました。音の感じ方は人によって違うのに、それに加えて発生する音の質は事前に予測することはできないんです。ですから試作はほぼ一発勝負。だから時間的なリスクを考えながら、例えばゴムダンパーも贅沢な使い方をしているんですよ。同じ50dBの音の大きさでも、周波数によって音の感じ方は全く違いますから。できる限り不快にさせない音の質を実現しようと、随所に工夫を凝らしました。

清水

他にも、吸気口のスリットは内部のLED光が万が一の場合でも漏れ出ないような角度に設定していたり、二つ配置されているのは、双方向から吸引するという視覚的な安心感をもたらしています。使用シーンをイメージして、ひと目見れば使い方がわかるようにと気を配りましたね。場所の制約がある時は縦型でも使用でき、狭い空間でも主張せず、圧迫感のないデザインを目指しました。

世の中のコミュニケーションの不安に、安心を届ける一台になってほしい。

松澤

技術面もデザイン面もほんと、こだわりを詰め込みました。でも、やっぱり一番大切なのは、最初の「どんな企画にしていくのか」というステップですよね。そこが市場・ニーズに基づいてないと失敗するというのは、私の過去の経験からよく学んだものです。「世界初の技術」という看板で開発しても、あまり成功した試しがないですよね。

清水

そこは僕も一緒かな。世の中の「ニーズ」や、まだ顕在化していない「ウォンツ」をいかに感じ取るかが大切だと思っていて。でもむずかしいのは、やっぱりその読みの精度ですよ。いくら綿密に考え抜いたとしても「こんな人が買ってくれるのね」という「うれしい誤算」が、製品開発には付きものですから。

松澤

それにしてもこれだけの短期間と少ない人数で、濃縮された時間だったと思います。自分たちが作った商品だと、胸を張って言えますよね。今回、プロモーションにも注力していただけているので、やりがいという意味でも大きいですよ。

清水

いろんなことを並行して開発を進められるということも、やっぱりチームが「一体」になって、先を読み、準備しながらできるから。開発プロセスを含めて、より自信を持ってお届けできる商品になったので、ぜひ皆さんに使ってもらいたいですね。

松澤

そうですね。eLENA Linはビジネスシーンを中心に、面と向かってコミュニケーションを取る空間に安心をプラスするための商品です。マスクやパーティションが今すぐなくなるということはないかもしれませんが、eLENA Linをご使用いただくことで、より大きな安心が手に入ればいいなと思っています。

清水

私もwithコロナの時代において、eLENA Linにより安心して暮らしや経済活動が行われていくようになることを願っています。パーティションが外れた時や、マスクが取れた場合などを見据えて、コミュニケーションや飲食するシーンでの安心につながっていくとうれしいですね。

2022年4月取材

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